指揮者と指揮棒の歴史!オーケストラ最重要ポジションの成り立ちと発展の歴史を徹底的にご紹介。

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  • 最終更新日:2018年11月01日
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指揮者誕生の歴史

クラシック音楽の世界において指揮者が一番の花形です。演奏が終わると観客から送られる拍手・喝采は演奏したオーケストラではなく、指揮者に対してのものだって知っていましたか!?

どの指揮者がオーケストラを指揮をするかによって、コンサートのチケットの値段も変わりますし、売り上げも大きく違ってきます。また、オーケストラはどの指揮者が音楽監督になるかによって演奏の質にも大きく関わってくるという側面もあり、現代の指揮者はクラシック音楽を語る上で大変重要な存在になっています。

素晴らしい演奏を生み出すクラシック音楽界の宝である指揮者はどのように生まれ、どう発展してきたかを見ていこうと思います。

指揮者の誕生

指揮者誕生の歴史

指揮者と聞いてまず思い浮かべるのはどんな人でしょう?オーケストラなどで演奏する曲のテンポ、強弱、表情などを指示し、演奏全体を統率する人、そんな感じではないでしょうか。もっと簡単に言うと学校の音楽の時間、みんなの前に立って手を振りまわしていた人という印象を受ける人もいるかと思います。

指揮者のルーツは古代ギリシャのコーロ(合唱)に遡ると言われています。その指揮者は足を上げ下げすることでテンポを決め、フレーズを整えていたようです。

バロック時代の指揮者

17世紀、バロック時代は作曲家がチェンバロを弾きながら奏者たちに指示を与えたり、ヴァイオリン奏者が立って弾きながら弓で指示を出したりしていました。バロック音楽の時代の指揮といえば、拍を維持する事こそが大切でした。

その頃は杖のような長い棒(指揮杖)を床に打ち付けてリズムをとっていました。指揮と言うよりは単純にリズムを刻んでいただけです。

この杖で今でも有名な事件が起こりました。この時代のフランス宮廷で活躍していたのが作曲家のジャン・バティスト・リュリでした。リュリは金属製の杖で床を叩いてリズムをとる指揮をしていましたが、ある時誤って自分の足を突いてしまい、その傷がもとで破傷風になり死んでしまったというエピソードが残っています。

古典派時代の演奏会

ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンなどが活躍した時代です。

この頃も作曲家が指揮をしている事は変わりがありません。しかし、杖でリズムを取ることを止め、手や腕や表情で指揮を行なって行く様になってきます。

現代の指揮者に段々と近づいてきます。しかし、その事を生業とする人物を必要とされなかった訳で、「指揮者」という専門家はまだまだ出現しません。

ロマン派時代の演奏会

その後、19世紀に入ってから、専門的な指揮者が必要になってきます。その理由としては次のような事が考えられます。

ベートーヴェンなどの出現で曲の構成などが複雑化してきた事で、専門的に楽譜を解釈する人物が必要となったことです。そして演奏会に取り上げられる曲が変化してきた事も大きな理由です。

この時代、メンデルゾーンなどが中心となって過去の名曲を復活させる試みが多くなってきました。その為、そういう音楽に触れていなかった音楽家達に指導する立ち位置になる人物が必要となりました。

話は少しそれますが、この活動の中でそれまで埋もれていたバッハが大作曲家として日の目を見ます。メンデルスゾーンの功績です。

音楽は再現芸術ですから、オーケストラで演奏する際「譜面を解釈し、演奏の基本方針を決める人」が必要になったのです。このことが今の指揮者に近づいてくる大きな要素になりました。

近代の時代の演奏会

作曲家兼指揮者時代から、作曲者と指揮者が別々の仕事として別れていくのが19世紀後半です。専門的な指揮者のさきがけはドイツのハンス・フォン・ビューローだと言われています。

現在の世界1のオーケストラ、ベルリンフィルハーモニー管弦楽団(以下ベルリン・フィル)の初代指揮者です。彼の登場によって、現代と同じ様に楽譜を解釈して指揮をする専業指揮者が誕生したわけです。

指揮棒の誕生と形態

指揮棒の誕生と歴史

指揮者が舞台で持つ事を許されるのは指揮棒という小さな棒だけです。そしてこの指揮棒も時代と共に指揮者同様の発展をしてきました。

指揮棒の始まり

指揮棒のことを「英語:baton(バトン)」と言いますが、普通は「ドイツ語:Taktstock(タクト)」を使う人の方が多いと思います。やっぱり音楽を導入したのがヨーロッパからだからなのでしょう。

先にも書いたように始めは単にリズムを刻む為の指揮杖と呼ばれる物から発展してきました。指揮杖の後は現代の指揮棒に近い物が誕生しました。そして19世紀後半になって初めて今のような指揮棒が生まれました。

音楽史上始めて指揮棒を使用したのがルイ・シュポーアというヴァイオリニストでした。と言っても最初は五線譜を巻いて筒状にした物だったようです。しかし、指揮棒を見慣れないオーケストラ楽員からどよめきが上がったとも伝えられています。

作曲家のウェーバーやメンデルスゾーンなども積極的に指揮棒を使い始めます。指揮杖に変わり指揮棒の時代が幕を開けたのです。

現在のように竹や木で作られた指揮棒が出てくるのは、もう少し後になります。当時は指揮棒を作るような職人はいませんから、全て自分かまたは弟子に作らせたと言われています。持ちやすいように持ち手の部分を工夫したり、滑り落ちないように材質を変えたりと、初期段階は大変だったに違いありません。

次第に単なる竹や木に黒く色を塗ったり、赤い指揮棒も見たことがあります。現在のような白の指揮棒に統一されたのは20世紀に入ってからの話です。

何故指揮棒が必要なのか

なぜ指揮棒が必要なのでしょうか。よく言われるのが大勢の演奏家にフレーズの頭を指示したり、リズムをより明確に指示するためには、人間の腕の長さでは不十分なので、棒を持ってその長さを延長している、というのがその理由のようです。

指揮の目的は拍をきざむだけではなく、速度、強弱、アインザッツ、曲の表情など、演奏についての多くの事柄を指示するためにあります。指揮棒はその指示をオーケストラの人達に、より見えるようにするということが1番の役割だと思います。

指揮棒の形態、材質

材質ですが、昔は、竹やメープルなど木製が中心でした。現在は、カーボンやグラスファイバー製なども主流になりました。

カーボンやグラスファイバーは折れにくい事が特徴ですが、折れにくい事で非常に危険な事が起こる可能性があります。指揮者は上下左右に指揮棒を振り回すので、自分の顔や手に指揮棒が突き刺さるという事故が近年増えています。またオーケストラの最前列の演奏者を傷つける事故などもあります。

指揮者の故岩城宏之は言っていました。「指揮棒は折れるから良いのであって、折れない指揮棒は凶器にしかならない。だから指揮者は木製の指揮棒を持つべきである」と。

指揮者によって指揮棒の長さは、まちまちです。市販のものを、弟子が削ったり短く切ったりして自分にフィットする指揮棒を作る人もいます。

1960年代のトスカニーニやフルトヴェングラー、ワルターなどは、比較的長い木製のずんぐりした指揮棒を使用していました。ニューヨークにあるニューヨーク・フィルの本拠地ディヴィッド・ゲフィン・ホール(昔のエイヴリー・フィッシャー・ホール)には、ワルターの指揮棒が展示してあります。

ベルリン・フィルの本拠地、ベルリン・フィルハーモニー・ホールには、前の音楽監督のサイモン・ラトルの指揮棒が展示してあります。ラトルもどちらかと言うと短めの木製の棒で、グリップもコルクではなく木製であるそうです。

1970年代の巨匠、カラヤンは、短めの白色、逆にカール・ベームやバーンスタインは長めの木目でした。

指揮棒の手元(グリップ)部分の形状も指揮者の好みで違います。太目のコルクをはめた物や同じコルクでも丸い形のものもあります。今では楽器店に行けば色々な形態の物が売っていますから、今の指揮者は楽になったものです。

指揮者によっては折れた指揮棒をプレゼントしてくれる人もいます。また、プレゼントするためにわざと指揮棒の先を折って、サインを入れてくれる指揮者も多くいます。指揮者も人気商売ですし、指揮棒なんて安い物ですからね。

指揮者の個性が光る指揮

指揮者小澤征爾

冒頭でも述べていますが、指揮者とはオーケストラの花形です。演奏家たちの表現を飛躍的に向上させる技能も持ち合わせており、当然指揮者によってその指揮の仕方は様々です。ダイナミックで個性的な指揮を行う指揮者や、冷静で静かな指揮者など本当に個性豊かで面白い!

指揮棒を使わない指揮者

合唱指揮者は基本的に指揮棒は使いません。曲の微妙なニュアンスや表情付けには指揮棒を使うより、手のしぐさで指示した方がより良く伝わるからです。

オーケストラの指揮者でも指揮棒を使わない人もいます。現役では小澤征爾(20年ぐらい前から指揮棒を使わなくなった)、クルト・マズアぐらいでしょうか。数年前に亡くなったピエール・ブーレーズもそうでした。

合唱が入る曲はオーケストラ指揮者であっても、指揮棒を左手に持ち替えるか指揮台に置いて、指揮棒を使わずに手だけで合唱団に対して指示を出す指揮者は数多くいます。在りし日のヘルベルト・フォン・カラヤンもそうでした。その姿はまたとても格好良く見えました。

指揮棒を振り回す指揮者

指揮棒を振り回す指揮者の代表格は何といっても故レナード・バーンスタインです。彼は興に乗ると指揮台を飛び跳ねて、指揮棒を大げさに振り、また両手を広げて肩だけを使って指揮したりと、見た目にも凄い指揮者でした。

小澤征爾が20代の頃はバーンスタインの様にすごく体を使って指揮をしていました。まあ、多くの指揮者は程度の差が有るとはいえこちらのグループに入ると思います。

たまに指揮棒が客席やオーケストラ側に飛んでいったと言う事が話題になるぐらいですから、現在の指揮者はこちら側の人が圧倒的に多いのでしょうね。

静かに拍子だけを取る指揮者

今の指揮者にはもういないのではないかと思われます。懐かしい例を挙げれば、リヒャルト・シュトラウス。この人はいつも左手をポケットに突っ込んで、右手だけで拍子を取っていました。

次はフリッツ・ライナー。この人も指揮棒が5CM動くかどうかでオーケストラが反応していたと言われています。

まとめ

簡単に指揮者の誕生と指揮棒の発展をみて来ました。現代は指揮者にとっては楽しい商売なのではないかと思います。自分の解釈通りに注文をつけ、その通りに演奏させる訳ですから。

でもそれを可能にする事は自分が如何に勉強しているか、別の言い方をすればオーケストラになめられない為にどれだけ自分の実力をアピール出来るかに尽きると思います。

逆に一筋縄では扱えないオーケストラに対してどう尊敬して貰うかによって、演奏会の出来も変わって来ます。そういってしまうと苦しい商売でもありそうです。

優秀な指揮者のタクトから優秀な「音楽」が生まれてきます。今度演奏会に行ったら指揮棒も良く観察してみてください。指揮者によって様々なタイプの指揮棒を使っていますから。

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