【吉岡徳仁】東京オリンピックトーチ、ガラスのベンチなどをデザイン!

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  • 最終更新日:2020年10月23日
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吉岡徳仁

銀座エリア最大級の商業施設「GINZA SIX」では、草間彌生やニコラ・ビュフ、塩田千春といったアーティスト達が、館内の中央の吹き抜けでインスタレーションを発表してきました。

ここで2020年2月27日から展示されているのが、日本を代表するデザイナー・吉岡徳仁(よしおか とくじん)の作品です。

作品のタイトルは「Prismatic Cloud(プリズマティック・クラウド)」。

1万本の細長い透明なプリズムが集積した、全長10m、高さ15mの巨大な雲をイメージした展示です。

吹き抜けのエスカレーターに乗って上昇していると、「光の雲」が上から垂れ込めていて、まるで、光輝く天上に誘われているかのような錯覚に陥ります。

今回は、この作品を作ったデザイナーであり、東京オリンピックのトーチのデザインもした、吉岡徳仁についてみていきましょう。

吉岡徳仁とは

1967年佐賀県生まれ。倉俣史朗、三宅一生のもとでデザインを学び、2000年、吉岡徳仁デザイン事務所を設立しました。

デザイン、インスタレーション等を次々と発表し、自然の美を映した繊細で根源的な、かつラディカルな作品を創り出しています。

光をテーマにした作品が多く、清明なデザインで世界中に知られています。

超有名企業のデザインを数多く手がけ、カルティエ、エルメス、ルイ・ヴィトン、イッセイ・ミヤケ、スワロフスキー、トヨタ等とコラボレーションをしています。

イタリアで開催されているミラノサローネ国際家具見本市(Salone del Mobile Milano)では、モローゾ、ドリアデ、グラス イタリア等の一流の家具ブランドと新作を発表しています。

世界中から高い評価を受ける

世界で最も活躍するデザイナーに与えられる、デザイン・マイアミ デザイナー・オブ・ザ・イヤー(2007年)や、ELLE DECO インターナショナル・デザイン・アワーズ デザイナー・オブ・ザ・イヤー(2009年)、ミラノ・デザイン・アワード(2017年)等の数々の国際的なアワードを受賞しています。

作品は、ニューヨーク近代美術館(MoMA)やフランス国立近代美術館(ポンピドゥーセンター)、ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(イギリス)、シカゴ美術館、東京都現代美術館等、世界の主要美術館に永久所蔵されています。

アメリカNewsweek誌による「世界が尊敬する日本人100人」に選ばれていて、今、飛ぶ鳥を落とす勢いのデザイナーです。

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ガラスのベンチ「Water Block(ウォーター・ブロック)」(2002年~)

まず私が最初に紹介したいのは、この作品です。

有名な作品なので、ご存知の方も多いと思います。

透明度の高い光学ガラスを成型したベンチで、光によってプリズムが発生し、幻想的な虹色の影ができる作品です。

成型する際に、高温に耐えられるプラチナ製の型(モールド)が使用されました。

ガラスが固まる瞬間に生まれる偶然の美しさ、それは、水が作り出す美しい波紋やきらめきを連想させる、自然が生み出す無秩序な美です。

綾なす光の美しさに、誰もが見惚れるばかりでしょう。

その美しさは高い評価を受け、2011年、パリのオルセー美術館の館内に10台が設置されました。

オルセー美術館には、マネやドガ、モネ、セザンヌ、ルノワール等の印象派の絵画が展示されていますが、画家たちが追究した光の表現と呼応するように、ガラスのベンチ「Water Block」は静かに館内に溶け込んでいます。

「Water Block」の揺らめく輝きは私の心を捉えて離しません。

「虹の教会」(2010年・2013年)

有名なガラスのベンチの他にも、光の美しさを表した作品があります。

「虹の教会」の建築プロジェクトです。2010年5月初旬~7月、韓国・ソウルで開催した個展で発表されました。

小さなクリスタルプリズム500本を、高さ12mまで積み上げて巨大なステンドグラスを作り、太陽から放たれる光を受けたプリズムが虹を描き出す、神々しく眩しいまでの神聖な空間が実現しました。

この建築プロジェクトのアイデアのきっかけは、吉岡徳仁が20代前半の頃にさかのぼると言います。

フランスに出張をした際、ニース近郊のヴァンスを訪れ、画家アンリ・マティスの晩年の設計であるドミニカ礼拝堂を目にし、その美しさに心を奪われたそうです。

マティスの絵画の特徴である青や黄色の鮮やかな色彩で描かれた美しいステンドグラスに、南フランスの陽の光が差し込む空間の中、自分もいつかマティスのような、光を全身で感じられる建築を作ってみたいという強い想いを抱き、夢に見続けてきたそうです。

キリスト教徒ならずとも、空間一杯に広がるスペクトラムの神秘的な空間に心が洗われます。

紙の椅子「Honey-pop(ハニー・ポップ)」(2001年)

軽く、そして高い強度を持っている蜂の巣に学んだ作品です。

そのハニカム構造をもつ椅子「Honey-pop」は、わずか1cmの薄さに折りたたまれた120枚の薄紙を広げる事によって立体となり、人が座ることで椅子のフォルムを造り出します。

その様子は、まさに魔術のようです。

「Honey-pop」はニューヨーク近代美術館(MoMA) 、フランス国立近代美術館(ポンピドゥーセンター)、ヴィクトリア・アンド・アルバート・ミュージアム(イギリス)、ヴィトラ・デザイン・ミュージアム(ドイツ)、クーパー・ヒューイット国立デザイン博物館(アメリカ)の永久所蔵品に選定されています。

閉じた時と広げた時、それぞれが美しい、まさに日本が誇る折りたたみの文化が昇華したものです。

「ガラスの茶室-光庵」(2011年~)

ガラスできた茶室は、第54回ヴェネツィア ビエンナーレ国際美術展 (2011年)にて建築プロジェクトとして発表され、2015年に、京都の天台宗青蓮院門跡境内の将軍塚青龍殿の大舞台に設置されました。

標高220mの大舞台からは京都市街を一望する事ができます。

ここは、8世紀、桓武天皇が立ち、京都盆地を見下ろして京都を都にすると決めた由緒ある場所です。

透明なガラスとステンレスのみで茶室を構築する事で、小さく限られた空間に自然の景色を組み入れる事に成功しました。

自然と一体化し、日本の思想や文化の原点を再発見できる空間になっています。

なお、この「ガラスの茶室-光庵」は、ガラスのベンチ「Water Block」と一緒に、現在、東京・新国立美術館に展示されています(展示は2021年5月10日まで)。

「光の結晶(Crystal of Light、クリスタル・オブ・ライト)」(2020年)

2020年10月16日の東京メトロ銀座駅のリニューアルにともない、吉岡徳仁の彫刻作品「光の結晶」が駅構内のB6出口付近に取り付けられました。

縦約1.65m、横約3.5mのパブリック・アートで、重さは2トンにもなるそうです。

やはりこれも、蜂の巣に学んだ作品になっています。

特別なカッティングを加えた一辺およそ6cm、六角形の636個のクリスタルガラスを集積し、2年半にわたって制作されたもので、設計する際に世界地図を用いていて、光で世界を表現しているとのことです。

世界平和への願いを込めて制作したとのことでした。

新たな銀座駅のコンセプトは、「憧れの街」「人と街をつなぐ光のゲートアベニュー」。

「光の結晶」は、まさにそのコンセプトにふさわしい輝きを放っています。

銀座駅の新たなシンボルとなることが期待されます。

店舗デザイン

吉岡徳仁は、様々な企業の店舗デザインや、展示会のインスタレーションを手掛けています。

店舗デザインやインスタレーションは、「光をあやつる」吉岡徳仁の魅力を最大限に感じ取る事ができる分野でしょう。

●エルメス「Remembrance(記憶)」(2006年)およそ30万本もの大量の透明なストローをウィンドウ一面にぎっしりと積み重ね、ストローを無造作に押し出して互い違いにし、エルメスのこれまでの歴史を訴えかけるようなインスタレーションでした。

●カルティエ「Cartier Time Art(カルティエ タイム アート)」(2011年)「時間そのものが芸術である」をコンセプトに、15万本もの透明なファイバーを天井から下げ、空間全体をレンズ化したインスタレーションで、カルティエの時計作りの職人たちのスピリットを表象しました。

●イッセイ・ミヤケ(1998年~2000年・1999年・2009年・2013年)様々な色をイリュージョンのように配置し、ブランドの持つイメージを伝えました。

●スワロフスキー(2005年・2008年・2009年・2013年)小さなガラスを集積し、光の洪水を作る事によって、得も言われぬ美しさを放つ作品群でした。

商品パッケージのデザイン

吉岡徳仁の手掛けた、私達の身近にある商品のパッケージやロゴのデザインをみていきましょう。

●イッセイ・ミヤケ「プリーツプリーズ」ロゴデザイン(1993年)、時計デザイン(2005年・2011年・2015年・2017年)

●コスメブランド「SUQQU(スック)」ロゴ、パッケージを含めたデザイン(2003年)

●KDDI携帯電話デザイン(2005・2010・2014)

●コスメブランド「ファンケル」パッケージデザイン(2012年)

●参天製薬 点眼薬「Sante Beautéye(サンテ ボーティエ)」ボトルデザイン(2013)

●シャンパーニュ「MHDモエ ヘネシーディアジオ、ドン・ペリニヨン」 瓶のラベルデザイン、ケースのデザイン:バカラ社とのコラボ「Prism(別売り)」(2017年)

どれも「光」を感じさせる美しいデザインです。

ルイ・ヴィトンとのコラボ

数あるコラボレーションの中で、私が特に惹かれるのは、ルイ・ヴィトンとのコラボです。

デザイナー吉岡徳仁のレンジの広さが垣間見えて興味深いです。

「Blossom Stool(ブロッサム・スツール)」(2016年~2018年)

木製の椅子で、牛革が貼られた座面が4枚の花びらになっていて、ルイ・ヴィトンのモノグラム・フラワーを象徴しています。

花びらの板がねじれてそのまま脚になっている、といった作品です。

吉岡徳仁得意のガラスを使った作品ではないですが、皮の光沢の美しさが目を惹きます。

ルイ・ヴィトンの公式サイトで買う事ができます。1,419,000円です。

4枚の板のみでできているところが、シンプルで明瞭、花という自然に学びながらも、ルイ・ヴィトンの持つオーセンティックな雰囲気を醸し出しています。

「Blossom Vase(ブロッサム・ベース)」(2018年)

「Blossom Vase」は、横から見ると普通のガラスの花瓶なのですが、上から見ると、ルイ・ヴィトンを象徴するモノグラム・フラワーの形をしている、といった作品です。

ルイ・ヴィトンの公式サイトで買う事ができます。546,700円です。

ねじれを加えたガラスの、流れるようなフォルムが美しく、ガラスに映る鏡像の妙を楽しめる作品です。

ルイ・ヴィトン初のレストランのチャージャープレート(2020年)

2020年2月にオープンした、ルイ・ヴィトンでは日本最大級の店舗「ルイ・ヴィトン メゾン 大阪御堂筋」。

その最上階に、ルイ・ヴィトン世界初のレストランがオープンしました。
 
そのレストラン「SUGALABO V(スガラボ・ヴィー)」のチャージャープレート(位置皿)をデザインしたのも吉岡徳仁です。

白地に金でモノグラムが配された端正なデザインは、ルイ・ヴィトンの歴史を感じさせると同時に、これから始まるディナーへの期待を抱かせてくれます。

「東京オリンピックトーチ」

輝かしい実績を持つ吉岡徳仁は、東京オリンピックの聖火リレートーチも委嘱されました。

トーチは、福島県の被災地の子ども達と描いた桜の絵にインスパイアされてデザインが生み出されたという事です。

日本を象徴する「桜の花」をモチーフに、素材には、東日本大震災の被災地で役目を終えた仮設住宅のアルミニウムを再利用していて、被災地の復興への想いが込められているそうです。

トーチを持ってランナーが走ることで、アルミニウムの表面に太陽光が反射し、きらきらと輝くようになっています。

重さは1.2㎏(本体約1㎏+燃料部200g)、色は「桜ゴールド」で、横から見ると上に向かって太くなる流麗な形のトーチですが、上から見ると、5枚の桜の花びらになっていて、一つ一つの花びらから、それぞれ炎が燃え立ちます。

それは、五大陸が一つになるという、オリンピックの精神に繋がります。世界の平和への願いが込められているとの事です。

まさに、このトーチは「復興オリンピック」を象徴するものとなり、また、このトーチを使った聖火リレーが、新型コロナウィルスの終息を祝うものになるよう、願わずにはいられません。

「目に見えないもの」へのこだわり

吉岡徳仁は語っています。「デザインを学び始めた学生時代(桑沢デザイン研究所)から、いわゆる『目に見えるかたち』には興味がありませんでした。

存在感やオーラのようなものがある『人間の感覚についての物作り』が重要だという考えが、以降も自分の中で大きくなっていきました。

人はどんな時にどのような感情が動くのか、また何に感動するのか、といったことに関心があります」

「見えないもの」へのこだわりこそが、魔術師のように次から次へと新しい技を繰り出すことができる理由なのではないでしょうか。

まとめ

ガラスのベンチで有名な吉岡徳仁についてみてきました。

その作品の圧倒的なまでの美しさは、他の追随を許しません。

「GINZA SIX」館内の「Prismatic Cloud」の展示は、10月下旬までとなっています。

ぜひ、吉岡徳仁の光輝く世界に浸ってみてください。

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