ダニエル・アーシャム【超有名企業とコラボを展開する異色のアーティスト】「化石化」とは?

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  • 最終更新日:2020年08月03日
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ダニエル・アーシャム

ニューヨークを拠点に活動する、今世界的に一番クールなアーティストの一人、ダニエル・アーシャムは、様々な超有名企業…あのウォルト・ディズニーや、クリスチャンディオール、ハンティングワールド、アディダス、リモワ等と次々コラボレーションしています。

日本の皆さんには、ユニクロ(UT)と、コラボTシャツを展開しているといえば、通りが良いかもしれません。

今回は、「フィクションとしての考古学」、「化石化」という考え方をもとに、作品を作り続けるダニエル・アーシャムについてみていきましょう。

ダニエル・アーシャム(1980年~)とは

ダニエル・アーシャム
ダニエル・アーシャム(Daniel Arsham)は、アメリカ・オハイオ州生まれで、幼少期をマイアミで過ごし、ストリートカルチャーに影響を受けて育ちました。

名門アートアカデミーのクーパーユニオンを卒業し、現在は、ニューヨークに制作拠点を置いています。

生まれながら色覚異常を持つ事から、作品の多くが白と黒を基調とし、素材に石灰や火山灰、ガラス、黒曜石を使用する等、退廃的で洗練された作風で知られます。

最近では、色覚補正メガネをを使用したり、スタジオチームに助けられたりして、フルカラーの作品も発表しています。

彫刻作品からペインティング、インスタレーション、映像作品まで手掛けるアーティストです。

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コンセプト

化石
ダニエル・アーシャムは、「今は、未来からみた過去である」という考え方から、現代に存在する物を「未来では忘れ去られてしまった物」と仮定し表現する「フィクションとしての考古学(Fictional Archeology)」をコンセプトに、「化石化した〇〇」、「〇〇が今から1000年後(西暦3020年)に発掘されたら」というシチュエーションの作品を制作しています。

アーシャムはコメントしています。「人々の時間の概念を変えるようなインパクトを与えたいのです」

故郷のマイアミで、ハリケーン・アンドリューが過ぎ去った街に散らばった残骸を見た子供の頃の記憶からもインスピレーションを得ているとも言います。

「デロリアン」も「化石化」

ダニエル・アーシャム デロリアン
そういうわけで、ダニエル・アーシャムは、あらゆる物を「化石化」して作品にしていきます。

彫刻作品としては、「化石化したラジカセ」、「化石化したカセットテープ」、他にウォークマンプレーヤーや、ポラロイドカメラ等の作品があります。

アーシャムにかかると、車も「化石化」されてしまいます。

「ポルシェ911クーペ」、「フェラーリ250 GTカリフォルニアスパイダー」や、映画バック・トゥ・ザ・フューチャーに出てくる車「デロリアン」も、実物大で「化石化」作品になってしまいました。

車のボディのあちこちから水晶が飛び出ていて、朽ちかけた様子の作品になっています。なんとも退廃的でおしゃれです。

「化石化」して朽ちかけている作品が、都会的で、センチメンタルで、寂しさもあり、人の心を打つのかもしれません。

ダニエル・アーシャムの人気の高さ

ダニエル・アーシャム
2018年12月に発売されたダニエル・アーシャムのフィギュア「HOLLOW FIGURE」は、前から見ると布に覆われていますが、後ろから見ると空っぽという形状になっていて、虚無感が感じられる傑作です。

そのフィギュアが、数量限定950ドル(約10万円)でダニエル・アーシャムのウェブサイトにて発売され、発売後3分で完売となりました。

また、2019年5月、ドイツのスーツケースメーカーのリモワとのコラボで制作されたアタッシェケースのシュールな彫刻作品を、限定500、2,200ドル(約23万円)で販売したところ、60秒で売り切れとなりました。

※1ドル=107円で計算

ダニエル・アーシャムの彫刻作品の落札価格

ダニエル・アーシャム
オークションでは、ダニエル・アーシャムの彫刻作品は幾らで落札されるのでしょう。

クリスティーズで行われたオンラインのオークション(2020年6月19日~30日)結果をみてみます。

●「ローズクォーツとブルーカルサイト(A Pair of Pink Quartz, Blue Calcite)」
475,000香港ドル(約660万円)

●「未来のバスケットボールの化石(×DIOR Future Relic Eroded Basketball)」
162,500香港ドル(約225万円)

●「未来の時計の化石(×DIOR Future Relic Eroded Clock)」
162,500香港ドル(約225万円)

●「砂の輪(Sand Circle)」
13,750香港ドル (約189,000円)

●「未来の電話の化石(×DIOR Future Relic Eroded Telephone)」
125,000香港ドル(約173万円)

●「ブルークリスタルのピカチュウ(Blue Crystalized Pikachu)」
93,750香港ドル(約130万円)

●「未来の文字の化石(×DIOR Future Relic D.I.O.R. Eroded Letters)」
75,000香港ドル(約104万円)

●「未来の本の化石『私は…』(× DIOR Futue Relic Eroded Book Je Suis)」
37,500香港ドル(約52万円)

落札価格が軒並み高額です。

「化石化」した朽ちかけの作品が世界中の多くの人々に支持されているようです。

※1香港ドル=13.8円で計算

彫刻作品の制作方法

これらの「朽ちかけの」作品はどうやって制作されるのでしょうか。

「バスケットボールが発掘されたら」というコンセプトに基づいて作られた、白いバスケットボールの彫刻作品を作る時には、本物のバスケットボールから型を鋳造し、火山灰と水晶と、ワックスと水を注入します。

すると油と水は混ざり合わないので、出来上がり時にボロッとどこかが崩れます。

作品は、偶然で出来上がる事が多いそうです。

この偶然の美が支持者を多く集め、様々な分野のデザイナーからコラボの声がかかるのです。

ディズニーとのコラボ

ディズニ ダニエル・アーシャム
2019年12月6日~8日に、中国・上海にて、世界最大級のストリートファッションのイベント「INNERSECT Shanghai 2019」が開催され、ダニエル・アーシャムとディズニーのコラボによるミッキー・マウスの限定商品が販売されました。

販売されたのは、ミッキーのぬいぐるみとフィギュアです。

ぬいぐるみには、アーシャムの手描きデザイン画や、彼のスタジオロゴの刺繍を配して、手作り感のある仕上がりになっていました。高さ47cm、110cm、200cmの3つのヴァージョンが展開され、それぞれ3000個、500個、10個の数量限定販売となりました。

「Hollow Mickey」というタイトルがついた白いミッキーのフィギュアは、高さ40cm、限定500個でした。

前作「HOLLOW FIGURE」と同様、一見すると布に覆われていますが、後ろから見ると空っぽという形状になっていて、ミッキーでありながらもメランコリックさも漂い、超現実的な魅力をたたえていました。

価格は352ドル(約3万7千円)~28,127ドル(約300万円)でした。

ディオールとのコラボ

ディオール ディズニ ダニエル・アーシャム
ダニエル・アーシャムは、クリスチャンディオールとのコラボで、彫刻作品や、製品を作っています。

ディオールとのコラボ彫刻作品

「未来のバスケットボールの化石(×DIOR Future Relic Eroded Basketball)」は、アーシャム得意のバスケットボールに、ディオールのロゴを載せた作品ですが、所々、水晶とローズクォーツが散りばめられ、神聖ささえ感じられます。

「未来の本の化石『私は…』(× DIOR Futue Relic Eroded Book Je Suis)」は、クリスチャン・ディオールが1951年に著した本、「私はデザイナー(Je Suis Couturier)」を化石にした作品ですが、いい具合に朽ちかけて、ディオールならではの高級感と、ノスタルジック感が伺えます。

ディオールのロゴ「未来の文字の化石(×DIOR Future Relic D.I.O.R. Eroded Letters)」ですが、白の文字の彫刻に、ピンク色のローズクォーツが所々飛び出ていて、美しい色合いがディオールらしさを醸し出しています。

ディオールとのコラボ製品

伊勢丹新宿メンズ館のポップアップストアで、2020年1月8日~21日(期間限定)にて、アーシャムとディオールのコラボ製品が華々しく売り出されました。

「1,000年後に発掘されたディオールは、ブティックの壁が朽ちて、化石化・鉱物化して出土しても美しい」をコンセプトに企画された製品は、
「DIOR AND DANIEL ARSHAM」 パーカ(132,000円)、 デニムパンツ(94,600円)、「サドル」バッグ(363,000円)、ボンバージャケット(290,000円)、キャップ(310,000円)、ネックレス(140,000円)、コンパクトコットンTシャツ(71,500円)となっていました。

そして、かつてのディオールのデザイナー、ジョン・ガリアーノが2000年春夏コレクションで発表した「ニュースペーパー」柄を復活させ、「B23」ハイトップ スニーカー(132,000円)等を発売しましたが、柄が3020年の新聞記事になっているという心憎い演出がされ、話題に事欠きません。

ポケモンとのコラボ彫刻作品

ポケモン ディオール ディズニ ダニエル・アーシャム
こちらも、ポケモン初のアーティストとのコラボとして話題になりました。

実はアーシャムは子供の頃から大のポケモン好きとの事です。

新たにポケモンとのコラボレーションプロジェクト「Daniel Arsham × Pokémon」を始動させ、「西暦3020年にポケモンが発掘されたら」というコンセプトをもとに彫刻作品を制作しました。

アーシャムは、「子どもの頃から身近にあった『ポケモン』というアイコンを通して、より多くの人々に僕の作品を届けられる事がうれしい」とコメントしています。

2020年6月9日~7月4日に、東京のギャラリーNANZUKAで、ポケモンロゴやポケモンカードゲームを引用した彫刻作品のほか、ピカチュウ、ヒトカゲ、ゼニガメ、カビゴン、イーブイ等お馴染みのキャラクターたちをモチーフにした作品が展示されました。

「西暦3020年に発掘した『ポケットモンスター 赤・緑』」の世界を表現したのです。

白を基調とした作品のあちこちから水晶や黒曜石が飛び出ていて、ピュアでスタイリッシュです。

ブロンズで作られたフィギュアは、所々飛び出ている水晶との色の対比が見事です。

そして、これらは作品として美しいだけでなく、これまで当たり前のように認知していたポケモンが経年変化した姿は、私たち自身の存在までをも問いかけてきます。

ユニクロUTとのコラボ

ユニクロUT ダニエル・アーシャム

今回、ユニクロUTとのコラボは、その「Daniel Arsham × Pokémon」の一環として実現しました。

「フィクションとしての考古学」のコンセプトをデザインに落とし込み、7パターンのTシャツを商品化したのです。

アイテムはメンズ(1500円)5パターン、ウィメンズ(1500円)2パターン、キッズ(990円)3パターンを揃えています。

大人にこそわかる「西暦3020年に発掘されたポケモン」

Tシャツはかわいくもありながら、ノスタルジックさもあり、不思議な魅力があります。

Tシャツのプリント部分が、アーシャムの作品の、写真ではなく、あえて手描きのスケッチになっているところも手作り感満載で気が利いています。

普通のポケモン柄ではなく、「朽ちかけた、化石化した」ポケモンの退廃的、都会的雰囲気は、お子様はもちろんですが、むしろ、大人にこそわかる、といっても過言ではありません。

ダニエル・アーシャムはユニクロのファン

アーシャムは、ユニクロの「アクセシビリティ(近づきやすさ、利用しやすさ)」のコンセプトにはとても共感していると言います。

アーシャムは、語っています。「僕もいろいろなプロジェクトを通して、いつもアート業界の人だけのためでなくて、幅広い人たちに作品を届けたいと思ってきた。僕の作品のテーマにアイコニックな物を扱う事が多いのも、多くの人が認識できる物を取り上げる事で、たくさんの人に僕の作品を身近に感じてもらいたいから」

実際、アーシャムは、ユニクロの愛用者で、ソックスと下着は全部ユニクロなんだそうです。

アーシャムの息子たちもKAWS(カウズ)や映画スター・ウォーズのユニクロのTシャツをたくさん持っているそうです。

ダニエル・アーシャムの友人

そんなアーシャムは、どんな人と交友があるのでしょうか。

アーティスト、KAWS(ブライアン・ドネリー)とは友人だという事です。

また、俳優で映画監督のジェームズ・フランコや、ニューヨークのストリートブランドKITH(キス)の創業者ロニー・ファイグとも親しいようです。

日本通のアーシャムは、日本にも友人が多く、ファッショニスタ・ポギー(小木基史)、アクセサリーブランド「アンブッシュ」のVERBALとYOON、三代目 J Soul Brothersの今市隆二、登坂広臣、NAOTOらと親しいとの事です。

こういう人たちとの交流も、インスピレーションの元となるのでしょうか。

輝かしい経歴

そのインスピレーションの非凡さは、輝かしい経歴が証明しています。

クーパーユニオン在学中に、ゲルマン・トラスト・フェローシップ賞を受賞。

2005年には、世界的ダンサー、マース・カニングハムの舞台セットを手がけています。

比較的若い時(25歳)から注目され、ニューヨーク近代美術館別館(MOMA PS1)、アート・バーゼル・マイアミ・ビーチ(マイアミ)、アテネビエンナーレ、ニューミュージアム(ニューヨーク)、ミルズ・カレッジ・アートミュージアム(オークランド)、カレダール・アートミュージアム(フランス・ニーム)等、世界中の美術館、国際展で作品を発表しています。

最近は、パリ・ルーブル美術館の「ミロのビーナス」、ミケランジェロ作「モーゼ像」の「化石化」作品に取り組み、フランスで「3020、パリ」と題して個展を開きました。

テレビで紹介

ダニエル・アーシャムは、テレビでも取り上げられました。

日本テレビの「新・日本男児と中居・新ファッション男児スペシャル(2020年7月5日放送)」の中で、ゲストの有名ファッションバイヤーの人が、アーシャム×ポケモン×ユニクロのTシャツを勧めていて、「アーシャムの作品は半世紀~1世紀かけて値段が上がるだろうと言われている」と絶賛していました。 

まとめ

ダニエル・アーシャムについてざっとみてきました。

おしゃれで時の流れを感じさせる作品を次々と繰り出すダニエル・アーシャムが、次に何を表現するか楽しみです。

次の展示会は、「ダニエル・アーシャム × ポケモン:レリックス オブ カントー スルー タイム (Relics of Kanto Through Time)」と銘打って、2020年8月1日(土)~8月16日(日)に、パルコ ミュージアム トーキョー(渋谷パルコ 4F)で行われます。

ぜひ、ダニエル・アーシャムのソフィスティケートされた世界を堪能してみてください。

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